ーミーンミーン…ー
蝉が鳴く声が聞こえてくる
もうそんな時期なんだ

「えーだから次のテストで40点以下をとった者は
 夏休みが無いと思えよ!聞いてるのか青木!黒田!」
「あぁ?」

蓮と直樹は最近学校にくるようになりわかったことがある
蓮の「あぁ?」は返事みたいなものだと
先生もそれに気付いてるみたい
それよりも

「青木聞いてるのか」

沙耶は日当たりがいいのか寝てしまった

「さっ沙耶」

起きないとまずいって

「んー?お昼?」
「青木」

手遅れだった

「え?」
「お前は確実に夏がないと思えよ」
「なにそれー!ひどいよ先生」

教室に笑い声が響いた


「まみぃ」
「わかってるよ今日から頑張ろうね」
「助かるー流石真海!」
「真海ちゃん頭いいの?」
「普通かな?」
「なにいってんの!学年20位以内に入ってるのに」
「へー・・・そうだ!2人とも土曜と日曜予定は?」
「うちは特にないけど」
「私はバイトが」

それを聞いた直樹は廊下に行き誰かに電話をかけていた

「はいはーい」

直樹はニヤニヤしながら戻ってきた

「明日からさ勉強会しない?俺たち4人で」
「本当!!絶対やる」
「私はやりたいけど無理だな」
「それなら大丈夫!若葉には話しといたから」

さっきの電話若葉さんにしてたんだ

「問題はどこでやるかー」
「うちは無理かな」
「蓮とこも俺んとこも無理だし・・・」

うっ2人の視線が痛い

「真海ちゃんは?」
「私は大丈夫だけど」

直樹は私に向けてにこって笑った

「よしっ!決定」

ん?まさか、泊まりがけでやるの

「ねぇ直樹まさか」
「もちろん泊まり」

ですよね。そうなるよね
そういえば蓮は?
起きる気配がない


「おじゃましまぁす」

沙耶と直樹、蓮3人同時にきた
蓮来たんだ、こうゆうの嫌いそうなのに

「あがって」
「きれいだね」

直樹は家に入ってからずっとキョロキョロしている
沙耶と蓮は来たことがあるから普通にしていた

「これはこうなるから・・・」

早速勉強が始まったけど
直樹と沙耶はまるっきりできないし
蓮はソファーで寝てるし

「真海ちゃんこれでいいの?」
「うんそれであってるよ」

私も苦手な英語をやらないといけないけど
全くわかんない

「真海英語苦手だもんね」
「うん」
「英語は蓮が得意だよ」
「うっそ!!」
「蓮これわかるか?」

蓮は私の隣からノートを覗いた

「これはこの形になるからこの単語が・・・」

隠れた特技ってやつ?
ずらずら言ってるけどわかりやすい

「わかったか?」
「う、うん」

すらすらと問題を解いていける
問題を解いてると今度は私の隣で寝始めた

「ね、言ったでしょ」

私も沙耶も意外という顔をしていた


「ふあー疲れた」
「真海ちゃん料理も上手なんていいお嫁さんになるね」

もうご飯を終えて私と沙耶は一緒にお風呂にはいり
直樹もあがり、今は蓮待ち

「お、きたな」
「「・・・」」

沙耶もきっと同じ気持ちだ
いつも髪が長くてはっきり見えなかったけど
今は邪魔なのか前髪を後ろにもっていってる
なんていうか大人の雰囲気が漂ってる

「なんだよ」
「なんでもない・・沙耶?」
「なんか寝ちゃったよ」
「え!うそ」

沙耶は私のベットで寝ていた
いつの間に…

「俺らも寝るか」
「そうだね」

蓮と直樹は隣の元おにぃの部屋で寝ることになった

「沙耶起きてるでしょ?」
「ばれた?」

そんな事だと思った
お泊まりとか大好きな沙耶が寝るはずないもんね

「だってね、蓮君の目のやり場がすごく困るんだよ」
「確かに」

どこ見たらいいのかわからなくなるよな

「ねぇ・・・」

本当に寝ちゃった


翌朝。
私は5時に起きて朝食作り
味噌汁に卵焼き、いたってシンプルな和食メニュー

「いい匂い」
「うわっ!」

後ろからの声に体が飛び上がりそうになった

「直樹いきなり話しかけないでよ!」

まだ心臓がバクバクいってる

「はは、ごめんね」

無邪気な笑顔を見ると怒れないんだよな

「もうできる?」
「あと味噌汁が温まれば」
「そんぐらいだったら俺でもできるから2人起こしてきてよ」

沙耶はいいけど蓮はさすがに抵抗がある

「でも・・」
「いいから!」

そのまま階段の前まで押された

「いってらっしゃい」

あの笑顔なにかある
今までの経験で絶対なにかある!
とにかく起こさないと
とりあえず沙耶から起こしに行くかな

「沙耶起きろー」

反応なし
ニコニコしながら寝ている
いい夢みてるんだろうな

「沙耶、私彼氏できたんだ」
「・・うそだー」
「うん、嘘」
「ひどいよ」
「ほら!起きた起きた」

変な話には反応するんだよなぁ
次は蓮か
朝の蓮はこわいんだよな
殴られたりしないよね

「蓮?起きてる」

スースーと音がするってことはまだ寝てる

「はいるよー」

てか、私の家なのに「はいるよー」っておかしいでしょ

「蓮起きろー」

こっちも反応なし
沙耶の対応の仕方はわかるんだけど
蓮はさっぱりわからない

「ご飯冷めるよ」

反応なし

「ケーキ作らないよ」

少しだけ動いたけどまた寝てしまった

「蓮起きろ!」

とりあえず蓮の体を叩いてみたり揺らしたりしてみた

「・・・うぜぇ」
「へ!?」
「お前わかってんだよな」
「え?ちょっ!蓮?!」

グイッて引っ張られたと思ったら
私の真上に蓮がいる
なんか寝起きの蓮って色気たっぷり
のまえにこの状態おかしいよ
蓮の腕の間に私がいる

「蓮?起きてる目あいてるよね?!」

だめだ顔が熱くなる

「・・・無理、ねむい」
「!!!」

おでこにゴツゴツした蓮の胸がある
なんでか抱かれてる

「れーんー」

押しても押しても腕はびくともしない

「そうだ」

蓮の腕をどかすんじゃなくて
私が蓮の腕から抜ければいいんだ
そして蓮の腕を上の方に押して腕から顔をぬくことに成功した

「ふぅー」

いろんな意味で疲れた
蓮の行動は予測不可能
どうしたらいいものか近づきたいけどさっきの光景を
思い出したら体が固まってしまう

「真海ちゃん無事?」
「あ、直樹」
「あれ?抱きつかれてる頃だと思ったんだけど」
「なっ!」

聞こえてないと思ってるみたいだけど
ばっちりきこえてるよ!

「あーもしかして終わった後だったんだ」
「さいてー」
「蓮寝ぼけてるといつも何かに抱きつくクセみたいのがあるんだよ」

あの笑顔に隠されてた事はこのことだったんだ

「蓮起きろ!」

そして蓮の脇に蹴りをいれた

「あぁ?」
「飯食うぞ」

蓮は舌打ちをしながら起きてきた
蓮はどっちかっていうと弟で直樹がお兄ちゃんってかんじだな



朝ご飯も食べ終わり早速勉強を開始した

「どう?できそう?」
「うん!真海のおかげでなんとかなりそう」
「俺もー」
「蓮は大丈夫なの?」

昨日からずっと寝てるけど

「・・全部聞こえてる」
「あ、そう」

聞いてできるもんなのかな?
それから何時間も勉強をした

「んー、これだけやれば明日は大丈夫だよ!」
「じゃーそろそろ解散するか?」
「そうだね、もう少しで6時になるからね」

そんなに勉強したんだ
…なんか最近胸がチクチクする


「じゃあ明日頑張ろうね」
「うん!ありがとうね真海」
「真海ちゃんじゃあね」

駅の方に行く3人を見送った

「寂しいなー」

あんなに賑やかなのは久しぶりだから
余計寂しくなるな



「終わったー!!」

無事テストは終わり、後は明日の結果を待つだけ

「手応えあった?」
「それ聞くー?はぁできる限りは解いたけどめちゃくちゃ心配」

沙耶はそう言ってるけど目は自信満々だけど

「蓮君と直樹君は?」
「先帰るってさ」
「そっか、じゃあ遊ぶ?」
「遊んじゃうか」

蓮と直樹がいないのは少し寂しいけど

「どこ行く?」
「んー久しぶりに沙耶の家行きたいかも」
「えーそんなんでいいの?」
「全然いいよ!」



「おじゃましました」
「またいつでもいらっしゃい」
「はい、ありがとうございます」
「真海じゃあねー」
「バイバイ」

やっぱり家族はいいなー
おばさん元気かな?今度おにぃと会いに行こう
こっちに来たついでにCDショップに行ってみようかな


「ありがとうございました」
特に欲しい物がなく曲を聴くだけになったのに
店員さんはちゃんと挨拶をしてくれた
それが仕事ってもんだよね

「あ、」

最悪だ
前から3人の男が歩いてきた
その中私が会いたくないNo.1の奴がいた

「あれ?もしかして山本!?」
「うん、久しぶり」
「おい、哲哉誰だよこのかわいい子!まさか彼女?!」
「ちげーよ」

佐々木哲哉、私の初恋の相手で初失恋した相手でもある

「なんだつまんねー」
「わりー俺さ急用思い出したわ!」
「へいへい」
「わりーな」

なんでここにいるのさ
神様のイタズラ?ならやめてほしい

「山本変わったな」
「そう?そっちこそ変わったんじゃない」
「俺はかわんねーよ」

当たり前なにも変わってない
その笑顔も声も私が知ってる佐々木哲哉のまま

「あのさー今時間ある?あるならどっか行かない?」
「急用があるんじゃないの」
「あー、あれは山本と2人になりたくて嘘ついた」

意味わかんない。こいつ最低だ
見た目は変わんないけど性格はかわったんだ
私こんな人が好きだったんだ

「時間あいてる?」
「悪いけど、あいてない」
「そうなの?ならさー」
「真海お待たせ!ん?誰こいつ」
「直樹!?」

なんで直樹がいるの?
それに今真海って呼んだ?空耳??

「真海になんかよう?」
「いえ!おっ男がいるなら、い、いえよ!」

佐々木哲哉は逃げるようにお店の中にいった
あいつじゃないけど私までがこわさを感じた
いつも明るい声とあの笑顔が蓮みたいな低く威嚇するような声
真顔であいつを睨む目
普段の直樹から想像ができない

「なんだあいつ腰抜けじゃん」
「・・・」
「怖かった?」
「・・あははは!」

急に笑えてきたお腹が痛い
さっきと全然違うじゃん今の幻覚?

「せっかく人が心配して駆けつけたのに、そんな笑うことないだろ」

少しふてくされて言った

「ごめんね、でもなんで?」
「さっきの奴のこと嫌いなんでしょ」
「そうだけど・・」

直樹は手に何個か袋をもっていた
買い物帰りだったんだ

「送るよ」
「ありがと」

そういえば直樹私のこと真海ってよんだよね
いやいやきっと私を助けてくれるために呼んだだけ

「・・・直樹」
「んー?」
「真海って呼んだ?」
「え?」

主語がないよ!

「えーとさっき真海って呼ばれた気がしてその、だから」
「真海って呼んで欲しい?」
「そ、そうゆう意味じゃ・・ないけど」
「はは、わかりやすいなー真海は」
「うっ」
「ほら乗るよ」

直樹にはかなわない
私は手を引かれるまま電車に乗り込んだ
名前を呼ばれることがこんなに嬉しいことだなんて

「ドアがしまりまーす」というアナウンスがはいり電車が揺れた

「おっとごめん、大丈夫?」

直樹は私の横にあったポールを掴んだ
直樹ってこんなに身長高かったんだ

「どうした?」
「うん、大丈夫」

なに顔赤くしてんだろ

「家まで送ろうか?」
「大丈夫まだ明るいし」
「寄り道すんなよ」
「ばかにしないでよ、子供じゃないんだし!」
「心配してんの、気をつけんだぞ」
「・・うん」

なんか負けた
わかんないけどなんか負けた

「また明日ね真海」
「じゃあね」

なんなのさあの不意打ち的なの
直樹は優しいけど優しすぎるよ

「ばか」