「今日は何しようかな」

今日は6月初めの土曜日、特にする事がなく暇している

「バイトはないし暇だな」
 
ピンポーンと家のチャイムがなった

「誰だろう?沙耶かな」


「はーいどちら様ですか」
「真、真海」
「え?!純にぃ?どうしたの?」

顔が赤いし、体が熱いということはまさか

「風邪ひいたの?」
「あぁすぐよくなると思ってたら悪化しちゃって」
「もーすぐに病院行かないとだめでしょ!
 とりあえず中はいって歩ける?」
「あぁ」

私のベッドに寝かしたけど
薬もないし、お粥の材料もないし

「純にぃ少し1人でいれる?」
「そこまで重病じゃねえよ」

かなり重病にみえるけど

「じゃあ私買い物行くから安静にしててね!」
「おう」


このぐらい買えば大丈夫だよね
駅の近くにあるスーパーである程度のものを買い終えた

「ふぅ」

「あれぇ真海ちゃんじゃん」
「あ、直樹君に黒田君!」

駅のほうから2人がでてきた
いつも2人なんだな

「すごい荷物だね」
「うん今おにぃが家にきてるから」
「手伝おうか?」
「だいじょ・・?黒田君?」

黒田君は私の手からレジ袋をとって歩きだした

「手伝うってさ」
「直樹君?!」

直樹君も私からレジ袋をとり歩き出した

「家こっち?」
「うん、ありがとう」
「いえいえ♪」

やっぱり優しいな

「何かっこつけてんだよ蓮」
「はぁ?ふざけんな」

私服も何かにてるし、仲いいし兄弟みたい

「クスッ」
「「??」」
「ごめん何か2人とも兄弟みたいだったので」
「「どこが」」
「あははは息ピッタリ」
「真海ちゃん笑いすぎ」
「しばくぞてめぇ」
「調子に乗りすぎました」
「真海ちゃんさいこだね」

今度は直樹君が笑い出した

「へー綺麗な家だね」

黒田君達に手伝ってもらいなんとかついた

「1人だから広すぎるんですけどね」
「何かごめん」
「気にしないでください」
「そうだ!真海ちゃんケータイ貸して」
「あ、どうぞ」

直樹君にケータイを渡した

「~♪よしOK!はいありがとう」
「何したんですか?」
「俺と蓮のケー番とメアド登録しといたから
 さみしかったらいつでも連絡して」
「え?」
「お前勝手なことしてんじゃね」
「まぁまぁ、じゃあまた学校で!」
「うん、ありがとね!」

直樹君は進んだけど黒田君は立ち止まったまま

「どうしたんですか?」
「・・蓮」
「え?あ、うん?」

黒田君が言ってる意味がわからなかった

「黒田じゃなくていい」

そう言った黒田君の顔は少し赤くなっていた

「蓮君って言っていいの?」 

舌打ちをして直樹君の方へ歩いて行ってしまった

「蓮君って呼んでいいんだ」



「純にぃ具合どう?」
「だいぶ良くなったよサンキューな真海」
「よかったぁ」

明日には熱はさがると思うから大丈夫だよね

「はいはいもう寝た寝た!」
「わかったって」


翌朝私はリビングに入り込む日差しで目を覚ました

「んー」

ソファーで寝ると腰が痛くなるな

「純にぃ?どう具合」
「あぁすっかり良くなったよ」
「そっか!」

顔色もよさそうだし大丈夫そう
今日はバイトがあったからよかった

「そうだ真海」
「ん?」
「お前1人で大丈夫か?」

家に帰ってくるといつもこの話しかしないんだから

「うんもう全然余裕だよ」
「そっかならいいんだけど」
「おにぃは心配しすぎなんだよ」
「もし何かあったら電話するんだぞ!」
「大丈夫!心配しすぎるとシスコンになるよ」
「なっ!」
「もうこんな時間!遅刻する」

現在8時4分、9時にお店が開くからそれまでに行かないと
私は慌てて準備をした

「バイトか?」
「うん!」
「なら駅まで送る」
「いいの?」
「あぁ、どうせ帰り道だしな」

胸にチクって針で刺されるような感じがした
また1人になるんだ、そんな気持ちがした


「純にぃ私ここで降りるから」
「そうか気をつけるんだぞ」
「はいはい、ありがと純にぃ」
「おう!じゃあな」
「じゃあね」

いきなり静かになると寂しさが増しちゃうなぁ

「あー真海ちゃん!」
「直樹君?」

またまた会ってしまった
でも何かホッとした

「いやぁ若葉に迎えに行けって言われたから来ちゃった」
「そうなの?」

若葉さんもかなりの心配性なんだから

「そういえば今日は1人なんですね」
「蓮は朝苦手だからね、きてほしかった?」
「そうですね」
「・・まじ?」

直樹君はすごく驚いた顔をしていた

「だって直樹君の隣にいつも蓮君がいるから何か足りない気がして」
「あ、そうゆうこと?」

なんかまずいことでもいったかな?

「んーところでさ真海ちゃん」
「はい?」
「その敬語禁止ね」
「へ?」
「俺のこと直樹って呼んでごらん」

そんないきなりいわれても!

「はい言ってみて!」
「な、なお、き?」

やばい人の名前呼ぶのってこんなに恥ずかしかったっけ
多分私の顔はかなり赤くなっている

「何で疑問系なの」

お腹を抱えて笑ってる

「そっそんなに笑わなくても!」
「あ、敬語じゃない」

うっすら笑いかけてきた直樹君の顔はきれいで
ついつい見とれてしまう

「それでいいの、真海ちゃんはそのままの方がいいよ」
「う、うん」

急にそんな顔で見られるとドキドキしちゃう

「どうした?」
「なっなんでもない!」
「なんで怒ってんの?」

熱でもあるかのように顔が熱くなるのがわかった


「おはようございまーす」
「ぜってぇやんねぇからな!」
「あんたに拒否権はないから!」
「ふざけんな!」

いつもに増して兄弟喧嘩が激しい

「珍しいじゃん蓮が朝早いなんて」
「こいつに起こされたんだよ」

1つ目の謎《なぜ機嫌が悪いのか》
この答えは朝が苦手な蓮君が早起きをしたから
いつも以上にこわい

「手伝ってって頼んでるだけでしょ!」
「強制的にだろうが」

2つ目《拒否権がない&兄弟喧嘩が激しい訳》
手伝いを断る蓮君に対して若葉さんは拒否権がないと言った
それを繰り返した結果喧嘩が激しくなった

「えーと若葉さん」
「あ、真海ちゃんおはよ!どうしたの?」
「何かトラブルでもあったんですか?」
「それが、いつも厨房に入ってた人が風邪で休んでるの
 そこで蓮に頼んでるんだけど「やんねぇ」の繰り返し!」
「蓮君料理できるの?!」
「それなのにやらないの!どう思う?」
「どうって・・・」

蓮君が何か作ってるところって…
あの顔で包丁持って何か作るなんて
ただこわいだけかもしれない…けど

「見てみたいかも!蓮君が料理してるとこ」
「!」
「ほら蓮ご指名だよ」

若葉さんはニヤニヤして言ってるから
その顔を見た蓮君は鋭い目で私を睨んできた

「だって蓮君が料理してるとこ想像できなくて・・」

やばい何か笑えてきた、こらえろ私!

「てめぇ笑ってんじゃねぇ」
「ご、ごめんなさい」
「そうだ!真海ちゃんも厨房入ってクッキーとか
 作れるお菓子系作ってちょうだい」
「わ、私もですか?!」
「こっちは私と直樹でやるからお願いね!さっ準備開始!」
「え?えーーー」
断る前に話が終わってしまった
若葉さん恐るべし



「なんでこんな事に・・」
「てめぇのせいだからな」
「はぁそうかも」

蓮君という神様から罰があたったのかもしれない

「さっと準備しろ」
「はい・・!!」
「なんだよ」
「あ、いや・・」

ずっと下を向いてたから気付かなかったけど
エプロン姿の蓮君って何かかっこいい
いつもと違うオーラ的なものがある
男の人がエプロン姿なのって緊張する

「おい、手動かせ」
「うん」

落ち着け私、いつも通りいつも通り!

「よしっ!」

次々と注文がきてるけど、その注文された料理を
蓮君はあっという間に作ってしまう
私も遅れないように次々とデザート類を作りあげた


「いやーお疲れ様」
「お疲れ様です」
「2人ともすごかったよナイスコンビネーションって感じ」
「真海ちゃんのケーキとクッキー評判よかったよ」
「本当?それならよかったんだけど」

それを聞いたら何か安心してきた

「蓮、真海ちゃん送ってあげて」
「大丈夫ですよ若葉さん、まだ明るいし」
「行くぞ」
「ちょっ、ちょっと待って蓮君!」

蓮君は私の腕を強く掴み取り歩き出した

「じゃあね真海ちゃん」
「若葉さん」

また蓮君に迷惑かけてしまう



「・・・」
「・・・」

どうしよ何か話題ださないと
最近風邪はやってるねとか?それとも料理上手だねとか

「何か話題、何か話題」
「・・・クッ」
「な、何で笑ってるの?」
「お前全部声にでてる」
「うそ!」

またやってしまった
あー恥ずかしい…

「お前らしくていいと思う」

そしてまた頭に大きな手がのっかた
さっきまで鋭かった目がほわんとした優しい目で
私の目を見ていた
胸をギュって締め付けられる感じがする
自然に顔が赤くなった

「い、行くぞ!」

その赤みにきずいたのか頭から手を離した
まだ頭に手の温もりが残っていて、また顔が赤くなった



その後はずっと無言だった
ずっと考えていたらいつの間にか家に着いていた

「じゃあな」

そう言って来た道を戻って行った

「ありがとー蓮!」

直樹だけ呼び捨てで蓮には君付けはどうかな?って
今まで考えていた結果、蓮と呼ぶことにした
それでも恥ずかしい
胸がポカポカする

「じゃあねー」

大きく手を振った
蓮は大げさって感じで笑ってるような気がした

「クシュン」

蓮が見えなくなるまで手を振った
なんだか今日はドキドキが沢山あったな





「それは恋だよ!それが好きって気持ち!」
「たしかにドキドキはしたけど」
「絶対そうだって」

沙耶に昨日のこととかいろいろ話したら「それが恋!」って
言い張っている

「クシュン」
「風邪?」
「ううん、違う。花粉だと思う」

朝からくしゃみが止まらない
クチャミするごとに頭がぼーとする

「でも顔少し赤いよ?」
「おっはー真海ちゃんに沙耶ちゃんだっけ?」

蓮と直樹が登校してきた

「うん、おはよ直樹君」
「おはよう直樹、蓮」

呼び捨てにしたけど、顔が熱くなっちゃう
なれないなぁ

「あれ?顔赤いよ大丈夫?」
「うん平気」

恥ずかしいからとは言えない
鐘がなってそこで話を終えたけど
体はだるいし頭は痛くなってきたし
目の前がぐるぐる回る感じがして気持ち悪い
顔の赤みもとれてないみたい

「お前帰れ」
「え?」

うわーすごい情けない声
喉も痛くなってきた

「熱あるんだろ」
「へーきだよ」

HRが終わり1時間目から移動
きつい…動きたくないけど行かないと

「真海大丈夫?」
「うん!平気だよ」
「まっまみ!!?」

やばいいきなり立ったからめまいが


…天井が見えるってことは倒れちゃったのかな
起きようとしても力が入らない

「ま・・・てる?」
「・・ち・・!!」

だめだ意識が遠のいていく

「帰る」

なぜかその声ははっきり聞こえた
体が宙に浮いた感じがする
顔がぼやけてみえるけど多分蓮だ
右腕に感じる手の温かさは蓮の温かさと同じ
その温かさを感じ私は眠ってしまった