あれから何日かたち私は冬休みにはいった

「今年はなかなか雪降らないね」

蓮から返事は返ってこない
あの初雪以来雪が降ることはなくどんよりとした空が広がるだけ
そんなことを思っていたらガラガラとドアが開いた

「・・・直樹」
「よっ!」

ケガもすっかり良くなっていた

「よく寝るよなこいつ」
「はは、ほんとそうだね」

いつもと変わらないのに起きない
そう思うと胸が苦しくて鼻の奥がツーンとなる

「何か飲むの買ってこようか?」
「別にいらねぇよ」
「いいから!コーラでいいよね」
「あぁ、悪いな」

お財布をもち病室をでた

「なぁ蓮、お前がもたもたしてんと俺がとるからな」
「・・・」
「なんなら今告ってもいいんだぜ?」
「おまたせー」

コーラとオレンジジュースを買い戻ってきた

「はいコーラ」
「サンキュー」

やっぱり起きてないか

「急に寒くなってきたな」
「温かいのにすれば良かったね」
「・・・大丈夫だよ」

直樹は窓がある方に行きベットに座った
私も窓に近づき外を眺めた

「あれ?1本多くない」
「えーとそれ、蓮の分なんだ」
「あーなるほど、じゃここに置いとくか」

直樹と同じコーラを蓮の枕もとに置いた

「少し晴れてきたね」
「ほんとだ・・真海」
「ん?」
「蓮のこと待ってられねぇわ」
「直樹?」

直樹は何言ってるの?
ただ直樹は私の目をじっと見ている
だんだんと近づく顔、私は動けなくて見つめるだけ
ゴトン、ゴロゴロと私の足元に転がってきたコーラ…

「・・・コーラ?」
「どっから転がってきたんだ?」
「な、お・・き」
「「!!」」

今たしかに聞こえたのは蓮の声だ
かすれてるけどずっと聞きたかったあの声だ

「蓮!!」
「真海・・・悪い」
「ううん、私こそごめん」

蓮の寝ているベットにボロボロと大粒の涙を落として泣いた

「直樹、ころす・・」
「お前が起きねぇからだよ、空気読めよなー」

ふざけているようだけど直樹の声は震えていた
きっと直樹は泣くのをこらえてるんだ

「泣くな、よ真海」

まだ口がうまくまわらないのか言葉が区切れ区切れになっている

「うん」

泣くのを止めても蓮の顔を見るとまた泣いてしまう

「結局泣くのかよ」
「だって・・」

ポンポンと軽く私の頭を叩く大きな手
子供扱いされてるようだけど落ち着いてしまう
いつもそうだった蓮といれば何となく落ち着く

きっと私は蓮に出会ったあの日から好きになってたんだと思う


「・・お・い」
「ん・・」

誰か呼んでる

「起きねぇと襲うぞ」
「・・・」

おそう?襲うって…

「え!?」
「なんだよ起きたのか」
「あれ?なんで?」

外は暗く、病室には直樹の姿はなく私と蓮2人だけ

「もしかして私寝てた?」
「あぁ」

時計の針は7時を指していた
えーとだいたい寝た時間は10時ぐらいだから
…9時間ちかく寝てたんだ

「よし、行くぞ」
「どこに?」

いいから来いっていう感じをだし歩き出した
病み上がりなのにいいのかな

「あっ!まだ安静にしててください」
「つれがいるから」

看護士さん見てるよ…
だめでしょ普通

「あの、暴れないように見ててくださいね
 あと、時間は守ってくださいね」
「あ、はい」

それだけでいいの?
そこは止めてくださいとか言うんじゃないの

「行くぞ」
「・・・」

いいのかな、いやよくはないな
そうだ、純にぃに連絡しとかないと

「・・・直樹か?」
「なんで直樹なの?」
 
怒ったのかよくわからないけど反応してくれない

「純にぃに連絡とってるだけだよ、ほら」
「・・・」

ケータイの画面を確認したとたん
蓮はさっきよりも歩くスピードを少し速くした
どうやら顔の赤みを隠すための行動らしい

「ねぇいい加減どこ行くか教えてよ」
「・・・上」

上って…屋上のことか
すぐ右に上につながる階段があり
蓮はズカズカと階段をのぼって行く
しばらく無言のまま上へ上へと進んでいき屋上に着いた

「うわぁきれー」

暗い空に輝く三日月と多くの星

「きれいだな」
「蓮でもきれいとか言うんだね」

バカにするように言った

「・・・」
「あれ?もしかして怒ったの?」

どうやら怒ってるらしい

「ごめんね」
「・・・うるせぇ」
「ほんとにごめんなさっ!」
「黙ってろ」

蓮は自分の方に強引に引っ張って私は蓮とキスをした

「ん・・・」
「顔あか」
「・・うるさい」

まだ唇に残る感覚と温かさ
そこに触れるとまた顔がいっきに赤くなっていく

「その顔襲いたくなるんだけど」
「・・・」

何か言い返そうと思ったけどできなかった
もう一度したいと思う自分がいて
不安になっている自分もいる
そんな自分の気持ちがイライラしてきた

「わるい、泣かせるつもりはなかったんだけど」
「ち、がう・・」

泣いている私を蓮が優しく抱きしめてくれた
蓮の温かさと匂いが不安になってる私を安心させてくれた

「うれしく、でも、怖いって思う自分もいて」
「真海、俺らが初めて会ったときのこと覚えてるよな」

すぐ傍で聞こえる声、あの時から私の気持ちは動き出した

「うん」
「あん時の真海俺らのこと見て怖がってて『こいつもか』とか思ってたけど
 ハンカチ巻いてくれて何か嬉しくて」

そう、怖いと思ったけど何にも知らない私の事を助けてくれて
一匹の獅子のような蓮に目を奪われていた

「うん」
「それから学校行くようになって少しでも多く真海といて
 真海のこともっと知りてぇって思い始めて離れたくなかった」

私も蓮が若葉さんと兄弟で、甘党で、料理が上手で、
朝は和食派で…そんな小さな事でも蓮に近づけたと思えた

「・・・」
「真海がおばさんの所着いてきてって言った時は
 俺が必要とされてると思えて嬉しかった」

1人で行くのは不安で気付いたら蓮に頼んでた

「そん時純さんに言われたんだよ『真海のこと頼んだ』ってな
 青木も俺に話してくれた『真海に好きって気づかせて』って頼まれた」

ほんとおせっかいだなぁあの2人、でも2人の優しさが伝わる
その時はもう知ってたんだろうな

「で、真海を守りたい離したくないって思ってきた
 そんで真海に伝えようって思ったけどこんなことになってよ」

私も沙耶に背中を押してもらい伝えに行こうとした

「だから今言わせてくれ」

蓮は私の体を離して目を真っ直ぐ見つめてきた

「好きだ」

短い言葉だけど私の中にあった不安の気持ちがスッと無くなっていった

「私も好きだよ蓮」

あの日出会ってから私は蓮に恋してたんだ
私と蓮は2人の気持ちを確認するように深く温かいキスをした

蓮が教えてくれた好きという気持ち…