その日、俺はサナの部屋に泊まることにした。

だからといって何かあった訳じゃない。

俺にその気がなかったから。

仮にあったとしてもサナがそれどころじゃなかった。

ただ俺はサナが寝るベッドの横で座り込んでいた。

そのまま、朝を迎えた。

俺はサナを起こさないようにそっと部屋を出た。

その二日後、バイトでサナとあの日以来で会った。

俺は何も無かったような振る舞いをした。

サナも覚えていないと思ったからだ。

だけどサナは覚えていた。

そしてたまたま仕事の都合上、二人きりになってしまった。

するとサナは申し訳なさそうに言った。

「先日はごめんなさい。春木くんが私を家まで送ってくれたのよね。本当にごめんなさい。色々」

『色々』とはきっと俺を引き止めて俺がサナの部屋に泊まったことだろう。

「付き合ってみる?」

そう言ったのは俺だった。

サナの返事はなんとOKだった。

最初こそ好意はなかったものの、一緒にいる時間が増えるにつれ、それなりに彼女のことを好きになっていった。