裏庭というのは、言葉通りに校舎裏の庭のことだ。


 いつだってそこは日陰になっていて、用務員さんが使う用具入れの倉庫と数本の木だけが植わっている。


 そんな何もない場所である一方、校内カップルがお昼を食べたり待ち合わせをしていたり、独り身の私には縁のない場所であったりもする。



「……そんなの、わかってるはずだったのに」



 そう小さく呟いて、げんなりと息をついた。


 現在、裏庭へ続く渡り廊下の陰に、私は身をひそめている。


 掃除用のホウキとちりとりをもって、はたから見れば何をやっているのかと思われるかもしれない。


 でも、これは仕方がない。


 とても掃除ができる状況じゃない。


 私がもう一度ため息をつくと同時に、女の子のクスクスという笑い声が聞こえた。