「……いや、ないよ。用事なんてないから、私がやっておくよ」



 何度も経験済みな出来事に、私は断ることも諦めて返事をした。


 用事がないというのは心外だけれど、まだ時間はある。


 暇つぶしということで、引き受けておこう。



「ホント? 助かるー!」


「さすが野崎さんっ」


「ありがとー!」


 
 なんて私への言葉もそこそこに、女の子たちは教室を出て行った。


 残された私は、数名のクラスメイトに憐れむような視線を向けられて、いたたまれない気分になる。


 そう思うなら、ちょっとはこっちに加勢してほしいんだけど。


 なんてことを思って、一度も加勢してもらったことがないのが厳しい現実だった。