根暗さんと総長くん


「……言ってるじゃないですか。うちの叔母たちは、他の人間が私を預かるなんてこと知りませんでしたよ」



 そんな怪しすぎる人間を、どう信じろと言うんだ。


 私がそう言って腕を振り払うと、あっさりその人は手を放した。




「とにかく、もう私に関わらないでください。今度こそPTAに訴えますよ」


「ははっ、それは困るなぁ」




 そう言って笑ったその人は、少しも困った顔なんてしていなかった。


 いつも通り、毎日浮かべている笑みと同じ。


 余裕にあふれていて、何も問題なんてないような、人を不安にさせる笑顔だ。


 今日も私は不安になって、半ば逃げるようにその場を駆け出した。



 明日こそは、この結城恭也(ゆうききょうや)という人間と出会わないようにと、心の底から願った。