「じゃあ、そろそろ帰ろうか」
「ああ、はい。早く一人で帰ってください」
それじゃ、と回れ右をして駆け出そうとしたのに、すぐさま腕を掴まれた。
……またこのパターンだ。
私の日常は不幸の連続で成り立っているのかもしれない。
「聞き間違えかな。今、『一人で』って聞こえたんだけど」
「一人で帰ってください。私はこれからバイトなんですっ」
わざと振り向かないようにして、腕を振り払おうとした。
けど、まったくその人の手はほどかれない。
「一日ぐらいサボったって大丈夫だよ。真白ちゃん、真面目なんだし」
「それはサボっていい理由になりません」
「もうどうでもいいから、早く帰ろう」
「ああもうッ」
そろそろ嫌気がさしてきて、私は振り返りながらキッとその人を睨んだ。
