「それより真白ちゃん。きみ、今日裏庭で他人の逢瀬を盗み聞きしてなかった?」
「…………」
なんで知ってるんですか。
そう尋ねかけて、言葉を呑み込んだ。
この人はいつもこうだ。
なぜか私の一日の行動を、まるで監視しているように言い当てて見せる。
……本当に監視されているとは、思いたくないけど。
「しかも相手があの嘉島なんて、きみも物好きだね。あんな暴走族のどこがいいわけ?」
「……嘉島?」
聞きなれない名前に、思わず首をかしげる。
すると、その人は呆れたように笑った。
「嘉島陽斗(かしまはると)。うちの高校で一番の問題児。割と有名だよ、彼」
「はあ……。暴走族ですか」
なんというか、あまり馴染みのない言葉でぽかんとしてしまった。
