十年後──



街は少し緊張を帯びていた。
住宅街の真ん中にはスピーカーを持った兵士がいた。その横では数人の若者が兵士に囲まれていた。

「志願兵を募る」
スピーカーを通した声が住宅街全域に響く。

「尚、兵令刑を受けた者は速やかに出てくる事」

それを聞いて数人の男性がまた家から出てきた。家の前では泣く家族。
それを背中に背負って兵士に歩み寄る。

そして全員スピーカーを持つ兵士の前に並んだ。

「諸君の志願に礼をいう。共に命を国に捧げる事を誓うか?」

「誓います」

「では、敬礼」

全員が敬礼をする。その姿は勇ましかった。
そして、数人の男性は横の若者らに紛れた。

「もうこの辺にしようか?十数人集まった」
スピーカーを下ろす兵士。

「隊長。まだ一人兵令刑を受けた者が出てきておりません」

「何?どこの家だ」

「あそこです」

一兵士は一軒を指さした。

「よし。待っていてくれ。行ってくる」
隊長と呼ばれた男はスピーカーを置いてズカズカと歩いていった。