私はあなたの腕の中で

——椿 Side——
正門の前を乗馬部で使う馬を引きながら、通る。
すると正門の前に大きな人だかりができていた。
「どうしたの?」
馬を後輩に任せ近寄ると、人だかりの中に倒れていたのは…。
「花蓮ちゃんっ!!!」
真っ赤な顔をした、花蓮ちゃんだった。
息もあらいし、完全な熱のようだ。
「…ハァ、ハァ。椿くん…?」
「花蓮ちゃん、どうしたんだよ?」
「なんか、熱っぽくて…。ハァ…、倒れちゃったみたい」
倒れちゃったみたい、じゃないけど?
「執事は?」
「…呼んだけど、来ない」
何してるんだよ、まったくー!!!
そこで僕は花蓮ちゃんを抱き上げ、馬にのっけた。
「「「キャーーーーーーーー!!!!!!」」」
まったくこれだから困る。
こっちは病人を運んでるんだよ、考えてっ!!
「…梅原先生にいっといて。すぐ帰ってきますって」
梅原先生は、乗馬部の顧問。
後輩にそう伝えて、僕は学院を馬に乗って走り出た。

——執事 Side——
「お嬢様っ!?」
あれ…。
正門の前にはたくさんのお嬢様方が、座り込んでいらっしゃった。
「優亜様!!」
その中にたった一人立っていらっしゃる優亜様に、お声をかけた。
「執事―!!」
涙声で走り寄っていらっしゃった優亜様は、倒れそうだ。
「どうなさったのでございますか?!」
「花蓮が…、花蓮が…」
「お嬢様がどうなさったのでございますか?」
「執事っ!」
そこに、大きな怒鳴り声が私の耳に怒鳴り込んできた。
「つ、椿様っ…」
「どういうことだ、今さっき大森から聞いたぞ!お前、花蓮が熱で早退するって言ったのに、すぐ来なかったそうじゃないか!大切な妹なのにっ…!!!」
「も、申し訳ございませぬ」
椿様のお気持ちはよくわかる。
——自分のせいで、お嬢様に何かあったら。
「優亜様、お嬢様は?」
「向山だ」
椿様がぶっきらぼうに答える。
「花蓮は倒れる前、怜斗と一緒にいたそうだ。怜斗と一緒にいて、別れた後に倒れた。」
怜斗様…?
「怜斗はそのあと帰ってこなかった!」
なぜ、なぜだ…。
そのような薄情なお方だとは、思わなかった。
「俺は、怜斗を追う。花蓮は向山と、馬で走り出ていったそうだ。お前の腕なら軽く追いつける!」
そういって、椿様は馬にさっそうとまたがられた。
「後で花蓮のところに行くから、ちゃんとどこにいるか知らせてくれっ!」
勢いよく走られていった。

とにかく今は走らなければならない。
向山の坊ちゃんなら、向山様が院長をされている向山大学病院へ向かわれるはずだ。
車に乗り込もうとした私に、優亜様が声をかけられた。
「待って、執事!私も行く!この目で、花蓮の無事を確認する!」
「…わかりました、優亜様。どうぞお乗りください!」
ドアを開け、優亜様をのせると、私たち2人を乗せたリムジンはエンジンを巻き上げながら発進した。