私はあなたの腕の中で

今日もたわいもない1日が終わって、一人車を待つ。
部活で騒がしいこの時間帯。
少し気分が悪いので、部活はやめて帰ることにしました。
「…頭痛い」
そう、さっきからずきずきするんです。
空模様があやしくなってきたから、偏頭痛かなって思ったりもしたんだけど。
どうやらそうじゃないみたいで、保健室の先生にもそういわれちゃったから帰ることにしました。
「ハァ…、ハァ…」
あまりの痛みにしゃがみ込んでしまった私。
その肩を抱いてくれたのは…
「怜斗様っ…」
「どうしたんだよ、花蓮ちゃん」
そういって、背中を撫でてくれる。
「熱でもあるの?」
焦った顔をして、私の額に手を当ててくる。
——ピタッ。
「…すごい熱だな」
そんなに熱があるのかな。
実感ないけど。
「車は?」
「もう来るって、言っておりました…」
さっき先生がしてくれた電話じゃ「すぐにくる」って、返答があったみたい。
でも、もう15分くらい待ってるのに来てくれない。
このまま、怜斗様に迷惑かけるわけには…。
「れ、怜斗様?」
「ん、なんだ」
「もう大丈夫ですから、お帰り下さい」
「こんな体じゃ無理だよ。一緒に待つ」
優しいんだな、と怜斗様の横顔を見ながら思った。
あれ、前もこんなことがあった。

「こんな体じゃ無理だよ。一緒に待つ」
7年前、羽田空港で逃げた時にお兄さんに言われたんだ。
車が来てくれるから待つって言ったのに。
なのに、お兄さんはこんな時に一人で逃げれるわけないって。
そういってくれたんだっけ。

「どうした?」
怜斗様に言われて、はっとする。
ふらふらする体をおして、何とか立ち上がった。
「大丈夫です、ちゃんと帰れますから」
「そう?そんなにいうなら、お言葉に甘えて帰らせてもらうね」
そういって、怜斗様は歩き出した。
「あ、お大事に」
振り返ってそういうと、怜斗様はちゃんと帰り道を歩いていった。
「…怜斗様って、優しいんですね」
後ろ姿にひとり呟いた。
怜斗様が豆粒になるくらいまで後ろ姿を見つめていたけど、そこから意識がなくなった。

——執事 Side——
「お嬢様、申し訳ございませぬ…」
そう思いながら、車を走らせる。
日曜日、向山家の庭園へお嬢様が行かれる。
そのための着物選びに没頭してしまった。

お嬢様は私が執事として初めてのご主人様。
だから、ちゃんとどこぞのお嫁になられるまでは責任もってお育てしたい。
その思いが日に日に強まっている。

しかし…。
お嬢様自身は、あの山村という男に心ひかれているようだ。
良家でなければいけないということを、あの方はわかっていらっしゃるのだろうか?

そういえば。
7年前のどこぞの少年に助けられたときと同じような顔をされていた。
とにかくお嬢様はわかりやすい。

しかも、私あの山村という男、どこぞで拝見したことがございますぞ?
あの者、何者なのでしょうか?