私はあなたの腕の中で

疲れて車に乗り込むと、疲れからかまぶたが閉じかける。
もう疲れたよ…。
そうして、私は深い夢の中に落ちていった——。

気づくとそこは私の部屋。
広さは、だいたい20畳ほど。
ベッドの上で、大きく伸びをする。
すると、ノックがあって執事が部屋に入ってきた。
「お嬢様?起きられましたか?」
「えぇ、今起きたところよ」
入ってきた執事の手には、ピンクの封筒が。
「それ、どうしたの?」
「これ、でございますか?」
もう封が切られていた封筒を、優しく手渡してくれた。
中身を見ると、万年筆のきれいな字で書かれた、花びらの押し花で飾られている綺麗な便箋だった。
書いた人は…。
「——楓くん?」
「はい、向山様の楓坊ちゃまにございます」
楓くんが、手紙なんてね。
すっごい珍しいの。
字はきれいなくせに、字を書くのが嫌いなんだって言ってた。
本当にきれいに書くんだもん。
師範免許も持ってるらしいよ。
ほんっとにすごい。

青野 花蓮ちゃんへ
今週の日曜日、僕の家の庭園へお越しください
お待ちしています
向山 楓

「何と申されていらっしゃるのですか?」
「庭園へ来てくださいって。今週の日曜に。」
「あのお美しい庭園にお招きされたのでございますか?お嬢様」
そう、向山のお家には綺麗な庭園がある。
日本三大庭園の一つでもある。
船も浮かべることができるらしいよ!
あのお庭に行けるのかぁ…♪
「…お嬢様?お嬢様?」
「あ、ごめんなさい!」
「もしかして、お嬢様と楓坊ちゃまは、そういうご関係で…?」
「ちちち、違うわよっっっ!!!もう、あんたなんか大っ嫌い!」
執事を部屋から追い出した。

そうよ、そもそも楓くんとはお友達なの。
それ以上でも、それ以下でもないわ。
大切な幼馴染よ。
大切な幼馴染…よ、ね?

私の手から「花びらの手紙」が落ちた。
真っ赤な絨毯の上に、小さなお花畑ができたようだった。