「......ごめんね」



スッと離れていく体温に、あれ?と思って目を開く。


それから、自分が目を固くつむっていたことにようやく気付いた。



「困るよね、よく知らない奴に、
突然こんなこと言われても」


「...え?なんでそうなるの」


「...え?」


「え?」



きょとんとする風間くんに、私もきょとんとして首を傾げる。


さっきまでの空気が消え去って、ふたりの間に流れる雰囲気は、数分前のクラスメイト同士に戻った気がした。




「だって、和泉さん...。
その......泣きそう、だったから」


「それは...」



風間くんが好き過ぎて限界突破しそうだったからです。



なんて、言えるはずもなく。



でも、何か言わないと誤解されたままだと分かってはいて。



なら、どうするべきだろう。





黙ったまま風間くんを見上げると、彼は困ったように微笑んだ。


その笑顔が少し切なげで、あぁ本当に私を好きでいてくれてるんだという思いと、そんな顔をさせたいんじゃないのにという思いが入り混じって、

ある一種の混乱のような、勇気のような気持ちが湧いてきた。



だから、後から考えればバカなことをしたと後悔するようなことを、このときはできてしまったんだ。