日に日に強くなる、彼への想い。
何気ない時に見せる仕草が、あの真っ直ぐな視線が、私の心を揺さぶってくる。
他の男性からの熱烈なアプローチには何も感じなかった私が、7つも下の青年にこんな気持ちを抱くようになるなんて、自分でも信じられなかった。
「熱心になってくださると教える側はとても嬉しいのですが、お付き合いされている女性は浮気の心配をしているのじゃないかしら?」
彼が華を習い始めてから2ヶ月が経った頃、私はずっと気になっていたことを遠まわしな言い方で訊ねた。
紺色の花合羽から道具を出していた彼は、手の動きを止めて私の顔をジッと見上げてくる。
「まぁ、彼女さんが心配するようなことは何もないのですが、少し気になったもので。……余計なお節介ですね、ごめんなさい」
どうしてそんなことを聞いてくるのだろうかと言いたげな瞳を見た私は、慌てて言葉を付け足していく。
彼女がいることを前提に話して、その返事で恋人がいるかどうかを知ろうとしていた考えがばれないようにと、私は必要以上に笑っていたと思う。
すると、不思議そうな目をしていた彼は少し間を置いて、柔らかく微笑んだ。
「華を習っていることは知らせているので、何も心配していないと思います」