「切る、曲げる、留めるが生け花の基本的な技術です。これは、繰り返して練習すれば上手になれます」
興味本位かたしなみ程度で習いにきたと思っていたのに、彼は自分で道具を用意して、この家に訪れていた。
そのことも含めて、私は真剣に話を聞く彼を見直し、丁寧な説明で教えようと心がけていた。
「はさみは上の柄を親指と手のひらで挟むように持ち、残りの4本の指は……こんな感じで」
指の位置が見やすいように、手のひらを彼に向ける私。
だが、彼はすぐに言った通りには出来ず、見よう見まねではさみを持っていた。
「あ……、柄の中に指は入れないように」
私はそばへ行き、彼の手を取って、正しい持ち方に直していく。
「こういう風にして、刃の開き具合を調節するんです」
彼の手に自分の手を重ね、一緒にはさみを持つ私。
ただ単に、わかりやすいように説明したつもりだった。
実際、彼以外の教え子にも、同じようにしたことは何度もある。
だが、そのときの彼の反応を見て、私は一瞬、戸惑ってしまった。
真剣な表情で重なった2つの手を眺め、ゆっくりとその目を私に向ける彼。
至近距離にいる彼の肌はとても艶やかで、瞳は黒く透き通っている。
興味本位かたしなみ程度で習いにきたと思っていたのに、彼は自分で道具を用意して、この家に訪れていた。
そのことも含めて、私は真剣に話を聞く彼を見直し、丁寧な説明で教えようと心がけていた。
「はさみは上の柄を親指と手のひらで挟むように持ち、残りの4本の指は……こんな感じで」
指の位置が見やすいように、手のひらを彼に向ける私。
だが、彼はすぐに言った通りには出来ず、見よう見まねではさみを持っていた。
「あ……、柄の中に指は入れないように」
私はそばへ行き、彼の手を取って、正しい持ち方に直していく。
「こういう風にして、刃の開き具合を調節するんです」
彼の手に自分の手を重ね、一緒にはさみを持つ私。
ただ単に、わかりやすいように説明したつもりだった。
実際、彼以外の教え子にも、同じようにしたことは何度もある。
だが、そのときの彼の反応を見て、私は一瞬、戸惑ってしまった。
真剣な表情で重なった2つの手を眺め、ゆっくりとその目を私に向ける彼。
至近距離にいる彼の肌はとても艶やかで、瞳は黒く透き通っている。



