異臭を放っていた体やあの部屋を見たからなのか。
今日の父は、私の願いに強く反対はしなかった。
「ありがとうございます。……ちゃんとお盆や正月には帰るから」
以前からフラワーアレンジメントの世界に誘ってくれていた知人に電話をかけ、私は海外へ行くことにした。
もう自分を見失わないように、と決意して。
光を愛していた頃の私は、自分の夢を見失っていたと思う。

父から聞いたのだろう。
旅立つ前に、光は私に連絡し、「会いたい」と言ってきた。
光は、もう私を愛していないはず。
自分の側から離れていくことを寂しく感じただけなのだろう。
以前の私なら、そういうことすら見抜けていなかったと思う。
誘いを断った私は、彼との縁を切って家を出た。

光、私はまだあなたを忘れてはいません。
何もかも見失うほどあなたを愛していた時間は、私にとって大切な経験になったから。
私はあなたが愛した「百合」になりたい。
まだ愛しているからこそ、私は変わりたい。
もう2度と、黒百合に蝕まれないよう。