黒百合(書籍「恋みち」収録作品)

顔に爪を立てて震える私は、大きな声で嘆いた。
あれは夢じゃなかった。
私はこの手で、彼女を殺してしまった。
1度でも「殺してやりたい」と思った自分が恐ろしくて、私は泣き叫びながら布団に身を埋めていく。
そのときだ。
手と顔の間に何かが入ってくる。
湿っぽい触感と強烈な臭いにゾッとした私は、急いで顔を離した。
挟まっていたのは、数枚の黒い花びら。
数枚だけでは止まらず、花びらはほろりほろりと手から沸いてくる。
布団を汚すかのように、落ちていく黒。
恐怖から目を逸らそうと上を向く私は、そこにある光景に唖然とする。
天井を埋め尽くす黒百合。
見渡すと、天井だけではなく、花は部屋中に咲き乱れていた。
大粒の涙が頬を伝う。
脱力した私は、そのまま体を横にして、黒百合に囲まれながら瞳を閉じた。