「どうして取れないの!?」
皮膚が赤く腫れ上がるほど、何度も何度もタオルで体をこする。
一体、私は何時間、こうしているのだろう。
朝、起きてから、ずっと風呂場の中にいる。
体に染み付いた異臭を取りたくて、ボディソープでドロドロになったタオルを持ち、何十回も体を洗っているが全く取れる気配がない。
この臭いは黒百合だ。
立て続けに起こる可笑しな現象は、確実に私の気を狂わせていた。
あの日から毎日、私は同じ夢を見ている。
あの女を抱く光を見るたびに、私は惨めな思いに苦しみ、恐ろしい女へと変わってしまう。
日に日にその行動はエスカレートしていて、昨夜に見た夢では、私はその女の体を刃物で切り刻んでいたほどだった。
目覚めるたび、私は自分が恐くてたまらなくなる。
そして、必ずと言っていいほど、側に落ちている花びらに脅えるのだ。
数日前から、常に黒百合の異臭が鼻につくようになった。
「髪の毛に臭いがついたのだろう」と思っていて、臭いに関してはさほど気にしていなかったのだが、今朝の私はこれが自分の体から放っているものだとわかってしまった。
なぜ、こんなことになっているのだろうか。
タオルを膝の上に置いた私は、泡のついた手で顔を覆う。