夢だったのだから、この部屋に光が現れたことも、霧に覆われたことも、別におかしくはない。
父から聞いた話を引きずっていたから、他の女と抱き合う姿が出てきたのだろう。
そこまで気にすることではないはず。
なのに、私はまだ夢から覚めていないような感覚を持っている。
知らない女の顔がはっきり見えていたことや、あの髪の感触がなぜか手に残っていることも、悪い夢だったとしてもリアルすぎる。
そして、手のひらを眺めていると、首をしめたときの女の苦しそうな声が耳に絡みついて離れない。
何よりも恐ろしいと思うのは、女を苦しめていた自分の姿だ。
私は手にしていた花びらをゴミ箱へ捨てて、部屋を片付けていく。
「やっぱり、出かけるのはよそう」と考えながら。

この時からだ。
この時から少しずつ、私は黒百合に蝕まれていった。
光……。
あなたは、ここまであなたのことを愛していた私を、気持ち悪いと思いますか?
重苦しいと感じていましたか?
変わり果てた私を見たとき、どう思ったのですか?