……あんな声、2度と出せないようにしてやる。
女の喉もとを掴んだ私は、その苦しむ表情を睨みながら、親指にありったけの力を込めていった。

「……夢?」
窓の向こうからの日差しで目を覚ました私は、今まで寝ていたという感覚が持てず、一点を見つめたままぼんやりしている。
目の下を指先で触ると、涙か乾いた跡のようなものがあった。
散らかった部屋を見渡す私は、昨夜の狂った自分を思い出して、小さなため息をつく。
外に目を向けると、太陽の光がとてもまぶしくて、散歩でもすれば少しは気が晴れるかもしれない。
部屋を片付けて出かけようかと思った私は、じゅうたんに手をつきながら立ち上がろうとした。
だが、手を置いた瞬間、変な感触が小指に当たる。
水を含ませた紙のような、湿った触り心地が気持ち悪く、私は手を浮かせながら、足元を見下ろしていく。
何かと思えば、そこにあるのは1枚の花びらだった。
「……黒百合?」
それを拾った私は、鼻につくひどい臭いと大きめな形を見て、何の花びらなのかはわかっていた。
だが、部屋で飾っていたわけでもないのに、なぜこんなところに落ちているのだろうか。
奇妙な感覚で、私はさっき見た夢を思い出していく。