黒百合(書籍「恋みち」収録作品)

「……光?」
どこに隠れているの?
やっと会えたのに、どこへ行ってしまったの?
電気もつけていなかったせいで、部屋の中は真っ暗だ。
彼を探す私は、部屋を明るくしようと立ち上がる。
そのときだ。
白くて薄い雲のような霧が、私の目の前に広がっていく。
まるで、行き場を塞ぐかのように。
不思議な現象を前にして、私の体は凍りついた。
息を整えながら目を暗闇に慣れさせようと、私は一点を見つめたまま立ち尽くす。
だが、目を凝らしても、一向に部屋の様子は映らない。
一体、私はどこにいるのだろうか。
そして、光はどこへ行ってしまったのか。
じわじわと手に汗が滲む。
恐ろしい空間に包まれた私は、混乱している頭を抱え、その場に座り込んだ。
これは夢なのだろうか。
「大好きだよ」
突然、背後から聞こえた光の声。
目を大きく見開いた私は、彼にすがりつくかのように、片手をついて振り返る。
すると、辺りを覆っていた霧は、目を向けた方からじんわりと消え始めた。