「彼女とはうまくいっていないけれど、紹介してくれた友達にも悪いから、すぐには別れられない」と光は言う。
最初はその考えに不満を感じてはいたが、毎日、私のところへ通う姿を見て、彼の言葉を信じようと思った。
だから、この時の私は「光の浮気が彼女にばれる」ということより、「若い男と一緒にいるところを、人に見られたくない」という気持ちの方が大きかった。
彼も、そんな私の心を読んでいるのだろう。
「わかった。……麗子さんが恥じることのないよう、オレも気をつけるよ」
皮肉な言い方で呟き、彼はがっかりした顔で帰っていった。
彼が閉めた扉を見つめながら、私は下唇をキュッと噛む。
光はまだ若いから、私の気持ちなどわからないのだろう。
待つだけの立場に不安を感じていることも、肌に触れるたび、触れられるたび、情けない感情を抱いてしまうことも、きっと彼にはわからないことなのだと思う。
光の無邪気な寝顔や絹のように柔らかな肌は、確実に私とは違うもの。
何気ないときに出る行動や、たまに出てくる学校の話に、彼の若さを感じるときもある。
この関係は、いつまで続くのだろうか。
私たちは、いつ終わりが来てもおかしくない2人。
彼の残り香を抱きしめながら、私は未来におびえていた。
同じ年代に生まれていれば、こんな不安を感じることもないのだろう。