「次の日になれば、また会える」とわかっていても、彼が帰る時間になると寂しくてたまらない。
だけど、歳のせいか、私は彼のように思ったことを前に出すことなど出来なかった。
「……わかったよ」
彼は私のそばから離れ、脱いだ服を拾いながら、小さなため息をつく。
残念そうな表情を眺める私は、本音を口に出来ない自分に嫌気をさしていた。
ちゃんと想いを伝えておかないと、いつか愛想をつかされてしまうのではないか。
そんな不安が、また胸の中を占めていく。
「そうだ!」
靴を履き、玄関の扉を開けた彼は、突然、見送っている私に明るい表情を見せてくる。
「今度の日曜、一緒に映画でも観にいかない? たまには外で……」
何を言い出すのかと思えば、彼は外で会うことを提案してきた。
「だめよ。誰かに見られるかもしれないし、私とあなたが一緒に歩いていると、世間は変な目で見るわ」
彼の声を覆うようにして、私はすぐに返事をする。
「数年ほど前、父から華を習っていた女の子が、偶然にも光の恋人だった」ということも理由の1つだ。