「あ、試合始まる前にお手洗い行ってくるね」 美咲がそう言いながは、カバンからハンカチを取り出した。 「じゃあ私たち先にスタンドに戻ってるね?」 「うん。あ……」 美咲の視線が私と陽菜の頭上を見たまま固まった。 「……………………茜?」 振り向くより先に、名前を呼ばれた。