孝太郎がバッターボックスに立っても、上の空だった。

どうして、こんなことに……。




カキーンッ


鋭い金属音がして、ボールが飛んでいった。

スタンドから歓声があがる。



「茜っ、孝太郎くん打ったよ!!」

「すごいキレイなスイングだったねー」

いつの間にか私より興奮している陽菜と美咲。




三塁まで走ってきて止まった孝太郎が、スタンドを見上げる。

「あ」

孝太郎の目が私を捕らえると、孝太郎は片手を挙げて、眩しいくらいの笑顔を向けた。




「「「「キャーーーーーッ」」」」




スタンドから今度は黄色い声。

私は苦笑いするしかなかった。