それから数分後。 部屋の窓がコツンと音をたてた。 ベランダにでると、そこに立っていたアイツ。 『来ちゃった』 なんて笑顔を見せるアイツ。 涙が止まらなくなった。 『少し、抜け出さない?』 そうイタズラっぽく笑って手を伸ばしてくれたのに。 私はいけなかった。 女手一つで育ててくれたママの期待を裏切れなかった。 弱かった。 あのとき差し出された手を握っていたら。 何か変わっていたかもしれない。