「ねぇ、どーして“茜さん”て呼ぶの?」
「え」
「茜って名前で呼んでよ」
「呼べないよ。ずっと…好きだったんだから」
最後は消え入りそうな声でそう言った孝太郎。
「佳乃のことは、名前で呼ぶくせに……」
ぷくっと頬を膨らませる。
「…………茜」
孝太郎が顔を真っ赤にしながらつぶやいた。
ギュッ
「うわっ、え、茜さん!?」
一生懸命な孝太郎が愛おしくて。
周りに人がいるのはわかってたけど、孝太郎に抱きついた。
「呼び方もとに戻ってるし」
「あ、ごめん」
「……孝太郎。好きだよ」
誰かが自分を好きでいてくれることの温かさ。
それを久しぶりに感じた。

