「渡辺ー。」

名字を呼ばれて前を向いたら
坂の真下にある信号待ちをしている
山田くんの姿が見えた
山田くんは信号が変わると小走りしてきた



「学校にいなかったから多分ここにいると思って」

そう息を整えながらいう


「学校で変な噂たつと困るし、ここで待ってた、走ってきてくれたの??」


「居なかったから走って探したよ、噂なんて気にしなくていいのに、そういえば卒業式両親来なかった??」


「先に帰ってもらった。山田くんのお母さんは??」


「俺も先に帰ってもらった」


一緒だねって
山田君は笑っていた



「えっと、返事、だよね」


今の今まで
よく、一緒に下校したけど、
お互いその話は避けていた

「...うん」


二月の時みたいに心臓が破裂するんじゃないかってくらい
緊張しだした

大丈夫。断れたら逃げよう。
高校も違うし会うことなんてない
そんな下向きのことを考えていた

山田くんは今どんな顔をしているのだろう?

気になるけど怖くてみることができなかった

私はずっと下を向いていた



「俺でよければ、お願いします」


「......」


え?何もう一回言って
ってなったけど必死に頭の中でリピートして理解できた

「こちらこそ、よろしくね」


今なら死んでもいい
それほど幸せでその時
満ちていた


それからお互いぎこちない笑顔で
一緒に下校した








ーーー現在、恵目線


本当はあの時
霊感があることいえばよかった。
今年こそは言おう
そう思いながら不毛な約三年間を
過ごしてしまったのかもしれない

まさか幸太君がこんなことになるなんて
考えたことすらなかった