「ねえ死神さん」
「ん??」
「亮ちゃんに触れるの??」
「無理だよ。透けちゃうよ」
「はは、ベタだね」
私はそっとしんみりコーヒーを飲んでる亮ちゃんに近づいた
「おい!薫はここにいるぞー!」
そう亮ちゃんの前で大げさにワーってやってみた
「……やっぱ見えないよね」
「ねえ。亮ちゃん、ごめんね。たくさん泣かせちゃったね
私ね、30年後の亮ちゃんの姿知ってるんだよ!
いいおっさんになってたよ!」
私が必死に話してるのに
聞こえてるのは死神さんだけで
「プロポーズも告白もありがとうね。
告白の時実は私も好きだったんだよ!!
でも勇気がなかったの。関係を壊すだけ勇気が。でも、嬉しかったなあ」
涙で前が見えなくなってきた
頑張って目をあけて
今の私すごく不細工なんだろうな
鼻水も涙も垂れ流して
でも少しでも多く亮ちゃんの顔を見たくて
涙をふくひまなんてないの!
「ありがとうね。
嘘ついてごめんね。違う人と幸せになってね。 」
あ、また私嘘ついちゃった
本当はほかの人となんて幸せになって欲しくないのに
本人に聞こえてなくても
亮ちゃんにはもう最低なことを言いたくなかった
「亮ちゃん。またいつか会おうね」
そう言って私は死神さんの座ってるベンチに戻った
「死神さん死神さん」
「ん??」
「また亮ちゃんに会えるかな」
「……うん、絶対会えるよ」
「そっか、うん!私満足した!もう49日終了!!天国いくー!」
「え?もういいの?」
「うん!未練はない!!」
「……そっか。じゃあ行こうか」
そういうとベンチから立ち上がって
私と死神さんはみんなに背を向けて歩き出した
「あ、幸太君からの伝言あるけど聞く??」
「うん、なになにー??」
「薫さんたちのおかげで、残りの人生悔いなく生きようと思えたってさ。ありがとうって言ってたみたいだよ」
「……そっか、うん、なら良かった」
ねえ幸太君
こんなちっぽけな私の言葉で
誰かを救えたなら
いい人生だったなって
そう思えるよ