偉そうなことを口に出してしまったが、沢城くんはたぶん今日初めて『負け』というものを体験して、初めて『悔しい』と感じた




生きていて誰でも当たり前に体験することを彼は今日初めて体験したのだ




わたしの言葉を聞いた沢城くんはイマイチ、ピンときていないのか、うーんと眉をひそませる




「…すいません、やっぱよくわかりません」




「そっか…、でも…少しずつわかっていけばいいよ」




初めて沢城くんという人が垣間見えて、わたしはそれだけで満足だ




これからもまだまだわたしの知らない沢城くんのことを知っていけるのかと思うと、胸が躍る




少しずつ、少しずつ





「だから、わたしたちの関係も少しずつ展開していければいいと思います!!」




「えっ!それとこれとは話が違います!先輩はもう少しキスとか、そういうことに慣れてほしいです」




「無理です!」





少しずつ、少しずつ




あなたとわたしの距離が縮まっていけたらいいな