どうやら沢城くんが自分の腕をわたしの両肩に置いたようで、顔を上げると、沢城くんの顔が目の前にあり、心臓がバクバクと鳴りだした
「さ、沢城…くん…」
ジッと見つめられるその瞳はいったい何を考えているのかわからなく、彼の顔が徐々に近づいてくると、周りの観客たちも興奮したように叫びだした
えっ?!まさか本当にここでキスするの!?
待って、待って、待って!!
沢城くんの胸に手を当てて、それを阻止しようとするが、まったくやめてくれる気配がない
お互いの唇があと数センチというところで、不可抗力で目を瞑ってしまうと、沢城くんがそっと囁いた
「逃げますよ、先輩」
「…えっ?」
その瞬間、力強く腕を引っ張られ、気づいたら沢城くんに手を引かれ、走っていた
突然のことでわたしも、さっきまで野次を飛ばしていた観客もみんな驚いていていると、そんな人だかりを掻き分け、沢城くんは前へ前へと進んでいく
やっとのことで人混みから抜け出し、体育館から出たが、いったい何処に行くのか沢城くんはまだ前へと進む
いったい沢城くんがどんな表情をしているかはわからないが、ぎゅっと握られている手と大きな背中に安心感を感じたわたしはいつまでも彼についていこうと思った
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