沢城くんは甘い





あんなことを大声で叫んでしまったおかげでわたしはまた注目の的になってしまった




どうしよう、このままここから消え去りたいと顔を俯かせると、突然観客の一人から信じられない言葉を投げかけられた





「お熱いお二人さんですな。ほんじゃま、ここはいっちょキスでもぶちかませてもらいましょうか!!」





…ん?




どこからともなく聞こえてきたその言葉に煽られたのか、さっきまで静かだった体育館が一瞬にして盛り上がり、あろうことかたくさんの人がその言葉に賛同し始めた




「そうだよ、彼女さーん。彼氏さん、頑張ったんだからご褒美のキスしちゃいなよ!」




「ほら、みんなもせーの。キース、キース…」




一人が拍手に合わせてキスコールを始めると、瞬く間に体育館中に広がった




突然のキスコールに審判や先生たちも止めさせようとするが収拾がつかないらしく、段々とそれは大きくなっていく





『キース、キース、キース…』





どうしよう、どうしよう、どうしよう




まさかこんな事態になるとは思っていなかったわたしは必死にこれが収まるまで顔を俯かせているが、全然終わりそうにもない




ひ、人までキスなんて無理だよぉぉ




涙がじわぁと目頭に浮かんできたその時、肩に重みを感じた