試合終了した後、沢城くんはわたしの元へと来なかった
終了のホイッスルと、相手チームの勝利を告げる審判の声と、観客の歓声が響いている体育館の中、彼はいったい何を思っているのか、ただそこに呆然と立ち尽くしていた
こちらからは後ろ姿しか見えないので、いったい彼が今、どんな表情をしているのかまったく見えない
わたしはそんな後姿に胸が痛くなり、気づいたら自然と足が動いていた
「…沢城くん?」
近づき、声をかけると、沢城くんは我に返ったのか、いつもの笑顔を向けてくれた
「先輩、すいません。その…俺、負けちゃいました」
笑顔でそう言う沢城くんだけど、前髪をくしゃっと握り、下を俯いていた
「…かっこ悪いな、先輩に絶対勝つって言ったのに…すいません」
徐々に小さくなっていく声にまた胸が苦しくなり、咄嗟に沢城くんの手を握った
「そんなことないよ!沢城くん、カッコよかったよ!わたし、ずぅーっと沢城くんのこと見てたもん!!」
そこでわたしはとあることに気付く
そういえば、ここ体育館のど真ん中だった…

