沢城くんは甘い





だが結局は話しかけることも出来ず、ただ時間だけがダラダラと流れていく




そんな時に、いつもなら委員会の仕事で朝早く登校する新庄の姿を珍しくその日のいつもの電車の中で見かけた




あちらも俺の姿に気付いたのか、こちらに近づいてきた




「よーぉ、沢城。珍しいな、お前がこんな早くの電車に乗ってるなんて」




「お前が今日少し遅いだけだろうが、俺は毎日この時間帯だぞ」




つい最近からだけどな




そうか?と首を傾げる新庄を横目に俺はいつものように彼女が電車へ乗り込んでくるのを今か今かと待ち望んでいた




そしていつもの時間にたくさんの乗客の中から彼女を見つけ出し、胸を締め付けさせられていると、隣いた新庄がぽつり




「あ、あれ六条宮の制服じゃん」




と呟いた




いきなり何を言い出すのかと思ったが、新庄の視線の先には彼女がいて、たぶんこいつが言ったのは彼女が身に纏っている制服のことだと気づいた




「…六条宮?それってどこの中学だ?」




「中学じゃないよ、六条宮高校。俺たちの学校付近の駅の3個ほど前の駅の近くの高校だっけ?制服が市内で断トツに可愛いって女子の間での噂で、毎年制服目当ての女生徒がたくさん受験するほどらしい」




「…女子校なのか?」




「いや、確か共学だった気がするけど?」




「偏差値は?」




「そこそこ上だな。たぶん50以上は軽く超えてなきゃ入れないレベルだろう…って何?お前もそこ受けるのか?」