沢城くんは甘い





そこからは実に単純で、ある意味本当に自分はストーカーなのではないのかと思うぐらい彼女に会うために俺は毎日その時間帯の電車に乗り続けた




朝にはめっぽう弱いほうだと思っていたが、自分でも驚くほどそれは毎日続いた




ただ一心に彼女に会いたいがために






だが、本当にただ彼女を眺めているだけだったのでこれといった進展もなく何か月も過ぎていく




そもそも彼女がいったいどこの誰かなんて知らないし、制服を着ているからきっとどこかの生徒なんだろうと思ってはいたが、いったいどこの学校なのかも制服を見ただけじゃわからない




自分と同じ中学生とも思えるほど小さな体をしているが、もしかしたら年上なのかもしれないとも思えてきて、知りたいことは山ほどあったのに、やっぱり声をかけられない自分がいた




というかいきなり声をかけて不審がられても困るし、どんな言葉をかければいいのかもわからない




他人にこんなにも興味を持つことや、こんなことで悩んでいること自体初めてのことだったので、どうすることもできなかった




そして時は流れ、秋




中学3年生だった俺はいい加減に志望校を決めてくれと担任に注意されたが、ぶっちゃけて言うとそんなのどうでもよかった




自慢ではないが俺は人より幾分か頭が賢いと自覚しているので、他の奴らみたいに必死に受験勉強する必要もなかった




そんなことよりも俺は電車の中でしか会えない彼女が一体どこの誰なのかを突き止めることが大切だった