沢城くんは甘い





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「先輩、そろそろ許してくださいよ」




「ちょっと、ひなの!!あんまり強く巻き付かないでよ!!」




えっと、




今の状況を簡単に説明すると




下校時刻になったので、帰ることになったんだけど、沢城くんと二人きりになるのがまだ準備が必要なわたしは一紀ちゃんに助けを求めた




だから、今は廊下を3人で横一列に歩いていて、わたしと沢城くんの間には一紀ちゃんがいる




一紀ちゃんの腕に絡みつきながら、沢城くんの様子を窺っていると、わたしの視線に気付いた沢城くんがにこっと微笑んできて、わたしはすぐに一紀ちゃんの体に隠れる




その笑顔には騙されないもん




わたしはもう何度もこの笑顔に騙されて、今日みたいなことに…




頭の中でさっきの光景が思い浮かび、体中が熱くなり、思わず一紀ちゃんの腕を掴む力が強くなる





「いたい、いたい!!ひなの!!」




「そんなに痛むなら、俺が代わってあげましょうか?むしろ代わってください」




「誰のせいだと思ってる」