本格的に紅葉シーズンが到来し、校門通りのイチョウの木が黄色や赤に染まったころ、悪戯の季節はやってくる
「沢城くん、沢城くん!トッリクオアトリート!!」
「…は?」
金曜日の放課後、いつものように図書室で肩を並べて、貸し出し口のカウンターでのんびりしていて、沢城くんが眠そうにあくびをしたとき、わたしは唐突にその言葉を発した
いったい何を言われたのかわかっていない沢城くんに、わたしはもう一度
「トリックオアトリート!」
と言ったが、沢城くんはやはり状況がよく読み込めていないご様子
そんな沢城くんの手首を掴み、わたしはマジックペンであるものを手のひらに描いた
「あぁ…今日、そういえばハロウィーンでしたね」
「えへへ、うん!」
わたしが手のひらに描いたのは南瓜のランタンと『Happy Halloween』という文字
今日は、もう既にすっかりとお馴染みになったハロウィーンで、わたしは今日会う人みんなに『トッリクオアトリート』と聞いて回っている
ほとんどの人はその言葉を待ち構えていたように南瓜の形をしたクッキーなどハロウィーン使用のお菓子をくれるが
稀に沢城くんのようにこういうイベント事に疎い人には、さっきのように手のひらに落書きをするなどという悪戯をやっている
ちなみに水性ペンで書いているので、洗ったら普通に落ちます