それでもひなのは真っ直ぐ彼女らを見上げ、また口を開く
「先輩は今、大切な人が泣かされたから怒っているんですよね?」
「だから、あんた本当にもう…」
「じゃあ、もし先輩の大切な人が、自分のせいで誰かに傷つけられたらどんな気分ですか?」
その言葉で、反論しようと前に一歩出た女の動きが止まる
「腹立たしいですよね、情けなくなりますよね、そして悲しく…なりますよね?」
ひなのの問いに何も言えなくなったのか、口を噤み、拳をギュッと握りしめる
泣き崩れていたもう一人も、その言葉に反応したのか、顔を上げる
「沢城くんも今、そんな気持ちなんです。ずっと自分を責めてるんです。だから…」
地面からひなのがゆっくりと立ち上がると、頭を下げた
「お願いします。沢城くんをどうか、そんな気持ちから助けてあげてください。…わたしじゃあ無理なんです、お願いします」
ひなのの切実なる思いだった
その真っ直ぐすぎる想いに何を思ったのか、二人ともただ立ち竦んでいた、何も言わない

