「ねぇ、沢城」
「…なんですか?」
「ひなのの『大丈夫』って言葉はね、一番信じちゃいけないの」
ひなの先輩の頭を撫でながら、佐久間先輩は静かに言った
「この子は何かあったときに決まって『大丈夫』という言葉を何度も使うの。まるで自分に言い聞かせているみたいに」
確かに佐久間先輩の言う通り、ここ一週間、ひなの先輩はまるで口癖のように何度も『大丈夫』という言葉を呟いていた
「何でかはわからないけど、ひなのは昔から自分の身に何が起きても何も言おうとはしない。今回みたいにいつも最悪な事態になってからわたしはこの子が大変な目にあっているってことに気付くの」
口調は落ち着いているようにみえるが、その言葉には何か力強い何かが込められていた
「ひなのは強い。どんなことがあっても泣かないし、滅多なことでは弱音は吐かない。だけど、ひなのは脆いの。
強いんだけど、簡単に壊れてしまう」
震える手でギュッと拳を握る佐久間先輩の声が震えている
佐久間先輩とひなの先輩は幼稚園のころからの幼なじみと聞いたことがある
佐久間先輩はきっと何度もひなの先輩のこういうところを見てきている
だから彼女はずっとひなの先輩の傍にいたんだ

