声をかけると、いつもの佐久間先輩からは想像もつかないぐらい先輩は真っ青になっていた
マスクを着用しているから風邪のせいかもしれないが、明らかに原因は別にある
「俺がひなの先輩を保健室まで連れていきます」
「…お願い」
震える声でそう呟いた佐久間先輩からひなの先輩の体を抱き上げる
初めて抱きかかえた先輩の体は吃驚するぐらい軽く、少しでも力を入れたら壊れてしまうんじゃないかというぐらい
そんな体をした先輩が階段から落ちるなんて…
正直、ひなの先輩が階段を踏み外し、自分から滑り落ちたとはどうしても思えなかった
最近の先輩の様子から見ると、きっと誰かに押されて…
そう思った瞬間、心の底から怒りが込み上げてきた
「おい」
自分でも驚くぐらいの低いトーンの声がその場に響いた瞬間、騒がしかった空間が一瞬にして静まり返った

