その日の昼休み終了間際、2年の女生徒が階段から転げ落ちたと噂を聞いたとき、いてもたってもいられなくなり、すぐにその場に向かおうと、自然に体が動いた




確信はないけど、最近のひなの先輩はどこか変だった




いったい何が変だったのかは説明できないけど、なんだか無理に笑っている、そんな気がした




本人はそんなことないって言ってはいたが、やっぱり不意に見せる表情はいつものひなの先輩とは違う、どこか不安げだった




絶対にひなの先輩じゃないと思いたいのに、何故か胸騒ぎがする




いつもなら走っても全然息苦しくなんかならないのに、今日は階段を上がっているだけでこんなにも苦しい




ひなの先輩




ひなの先輩




どうか階段から落ちたのがひなの先輩ではありませんように






噂になっている階段の踊り場に着くと、そこには既に何人もの生徒で人だかりを作っていた




その人だかりを必死に掻き分け、前に進むと、そこで一番見たくなかった光景を目の当たりにする





「ひなの?ねぇ、ひなの?ねぇってば!!」




いつも余裕たっぷりで堂々としている佐久間先輩が声を震わせ、弱弱しく横たわっている体を何度も揺するが、その人はびくともしない