沢城くんは甘い





ジャージだって最後の授業の前に乾かしておいた制服と着替えたし、スリッパのことも今日は月曜日だったから、先週持って帰っていたことを忘れていたと言って誤魔化しておいたのに、沢城くんの疑惑の視線が未だに突き刺さってくる




「いつもと違うって…、わたしはいつもこんな感じだよ」




「違いますよ。先輩、いつもはほわわんとしてるのに、何か今日はそれがないというか…」




「何、それ?」




真剣な表情で意味のわからないことを言う沢城くんがおかしくて、つい笑ってしまう




そんなわたしを見て、少しホッとしたのか、沢城くんも笑顔になる




「俺の勘違いですかね?」




「そうだよ」




「でも…、もし本当に何かあったら絶対に俺に言ってください」




ぎゅっとわたしの手を強く握り、真っ直ぐな目でわたしのことを見るもんだから、胸がどきっと高鳴った




だけど




「わかったよー。何かあったらね、あったら絶対に言うから」




「約束ですよ」




「うん、約束」




わたしは沢城くんに嘘をつく




言わない、絶対に言わない




何があっても沢城くんには絶対に、言えない