沢城くんは甘い





「何あれー?ぶつかってきたの、あっちじゃん!感じ悪ーい」




「でも、わたしも前見てなかったし…。それより、早く行かないと予鈴なっちゃうよ」




少し不服そうな綿子ちゃんを宥めながら、わたしたちは移動教室へと急いだ




ただ、なんでだかわからないが、さっきあの人とぶつかったとき、胸の奥で何か嫌な予感がしたような気がしたんだけど…




気のせいだよね?




わたし、あの人たちと顔合わせたのも初めてだし




心配することもないよね






だけど、その嫌な予感は的中し、移動教室から帰ってきた後、机の中に教科書を戻そうとしたら、一枚の紙きれがひらりと机の中から出てきて、床に落ちた




なんだろうと裏返してみると、そこには思いもよらない言葉が書かれていた





「ひなのー、あのさぁさっきの授業でわかんないとこがあってて…ひなの?」




声をかけても反応しないわたしを不思議に思ったのか、華南ちゃんはわたしに近づくと、わたしの持っている紙切れの文字を見て、眉を吊り上げた




「これって…」