沢城くんは甘い





みんなが言う金属…正しくは木製バット事件というのは中学に入学したての頃、一紀ちゃんが木製バット片手に上級生をぼっこぼこにしたというこの市内では結構有名な話で、わたしたちと同じ学年の女子高生殆どに知れ渡っている事件だった




だけどあれは実際、中学に入学したての頃、やけにわたしに絡んでくる上級生の人たちがわたしにちょっかいを出してきて、それに怒った一紀ちゃんが自前のバットでその上級生たちを懲らしめたというよくある…話ではないかな?





でも昔から一紀ちゃんはわたしが困ってることがあったらすぐにわたしのもとに駆け付けてくれていた




幼稚園の遠足のとき、みんなとはぐれて迷子になった時も、小学校の時、クラスメートの男子に体育倉庫の中に閉じ込められたときも、さっきの木製バット事件のきっかけが起こった時だって




一紀ちゃんはいつもわたしを助け出して、守ってくれていた




だからわたしにとって、一紀ちゃんはとっても大好きで、大切で、大事なお友達





「だからひなのをいじめているやつってたぶん一紀の怖さを知らない三年か、一年な気がする」




一紀ちゃんから急に話が戻ると、三人はまたうーんと頭を抱え始めた




「だーかーら、三人とも考えすぎだって!!」




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