【完】『いつか、きっと』

冬が始まる。

町寺の生垣で山茶花が石鹸のような清々しい香りを漂わせ始めた頃、ニューヨークから陣内一誠が一時的に帰朝した。

西陣に翔一郎を見舞うなり、

「お前なぁ、働きすぎや」

顔を合わせるなり、いきなり怒鳴られた。

「しっかり休むのも、仕事やぞ」

が。

スケジュールもある。

「あのなぁ、あの世に逝くのはせめて、エマちゃんときちんとした挙式あげてからにせぇ」

言葉こそきつかった。

だが。

誰もが心配をしている、ということは、翔一郎もすぐ察せられた。

すでに。

気づくと十二月になっている。

「年内にでも挙式したらどうや」

無体なことを言う、と翔一郎は露骨に嫌な顔をした。

が。

一誠の一言はあさ美や萌々子によって、

「Sプロジェクト」

という隠語で、密かに進展していたのである。



クリスマスイブの日。

明け方から京都では珍しく小雪がちらついたが、朝には止んで陽が射してきた。

(ワタワタしとる日に限って、雪だの雨だの降りよるなぁ)

人の世とは、そうしたものかもわからない。