例えば、目覚ましに起こされた時。例えば、終業のチャイムに起こされた時。例えば、夜中足元が冷たくて目が覚めちゃった時。

もっと寝ててえ…って思う。

別に人より働いてるとか、運動しているとかそういうわけじゃないんだけど、なんだか身体に疲れが溜まっている気がして、ずっと寝ていたくなる。昨日の夜も本当は実験の予習とかして過ごすつもりだったんだけど、21時という今時の小学生でも起きてる時間に布団に入ってしまった。

寝るのは好きだ。夢を見れたらもっといい。俺の夢は大抵楽しい夢かエロい夢かのどちらかで悪夢は見ない。「見ない」と言っても実際何を見たかは覚えていないし、実は一晩にたくさんの夢を見ているってどこかで聞いたことがあるから、ひとつくらい悪い夢かもしれない。でも、夢から覚める直前のあの浮遊感は何度体験しても気持ちいいしまた眠りたくなる。まあ、エロい夢だとそうはいかなくて気持ち悪くて起きてしまう。だから今朝、俺が二度寝もしないで朝早く洗濯機を回しているのは、まあそういうことだ。

俺は大学の寮に入っていて、洗濯は共同の洗濯室でするしかない。汚れたものを他の洗濯物で隠しながら廊下をそろそろ歩くのは切ないし、やるせない。寮自体は好きだけど。

ゴウンゴウンと唸るドラム式洗濯機の前でボーッとして、そのうち実験の予習をしていないことに気がついた。

実験レポートというのは苦手だ。実験の目的、原理、方法、結果、考察、まとめ…順番に書いて行くとだいたい考察で迷う。実験の結果と理論値があっていればそれでいい。外れていた時が困る。測定機器の個体差、測定誤差、測定ミス、温度、などなどありとあらゆる「言い訳」を駆使して考察に仕上げるのは実験より難しい。今週から始まるレポート地獄を、はあぁぁと溜息をついた。

2年から始まる実験は1年生の時と違ってペアが固定だ。オリエンテーションで配られた紙にはペア毎の学籍番号しか載ってなくて俺らは、自分のペアの番号主がずっと気になっていた。なんでペアの相手に拘るかというと、実験に自信が無いからで、相手も俺みたく実験苦手な人だったらどうしよう、とか逆に真面目過ぎて測定に時間をかける人だったらどうしよう、と不安でいたのである。俺の周りのやつも同様で、一ノ瀬なんかは早々に知り合いの女の子がペアだと判明した。この男だらけのむさ苦しい大学で女の子とペアになれるなんて幸運だと思ったら、一ノ瀬が苦々しく告げた名前を聞いて俺も同じ顔になった。田中というのはまあ、いわゆる可愛い系の女子ではあるんだけど、一ノ瀬と同じで勉強が苦手、というか馬鹿なのである。すげぇ馬鹿。馬鹿同士のペアだと実験はキツいだろうと同情した。