すぐにキッチンに立つと、あらかじめ用意していた夕食を温めた。


普段は弁当ばかりだから、こうした所でちゃんとした食事を摂って欲しいからだ。


「あの子達、すごいね」
「んー? そうかなー、大師匠に比べたら全然だと思うよ」


落ち込んでるなー、この様子は。


マージナルもコントじゃ一番だけど、漫才はサッパリだし。


ハギモト芸人の世界においては、漫才が出来るコンビが上、コント芸人はその下。


まあ、それでも売れてしまえば勝ち。


「いただきます」


いつもなら、何でもおいしそうに食べるのに、今日は全然。


「敬介、大丈夫だって。東京じゃ、マージナルは冠番組(その芸人の名前が付いた番組)だって持ってるし、それに……」
「でも、あんなの見せられたら俺、ダメだって思うよ。まだまだ」


元気付けようと、TVを点ける。


関西ローカルでハギモトの番組を見るのが、敬介の今の楽しみなのだから。


しかし、そこに映っていたのは……『Super ㎡』の2人。


灘 四輔師匠と一緒に笑っている。


「四輔師匠と一緒かー」


まずい、逆効果だ!


あわててチャンネルを変えようとすると、手を止められた。