向島先輩は、あたしに代わりスタッフの皆さんに挨拶回り。


少しは楽になったが、2人のワガママは果てしない。


「何や! このうどん」「黒い」


関東と関西の食文化は違うんだよ、君達。


いっその事、汁を水で薄めてやろうかと、丼を手にして廊下に出たら、敬介が向こうからやって来た。


「鳴瀬さん」


声を掛けてみたけど、何にも応えてくれない。


そこまで嫌われたのか、あたしは。


「この間は、すみませんでした」


これならどう? ダメ?


長い足は、スタスタと目の前を通り過ぎる。


やっぱり、振られたみたいだ。


そうだよね、体の関係も結婚の約束すら守れないデブス女だもんね。


敬介、でもまだあたしは大好きなんだよ!


例え担当芸人の敵でも、謝ってるのに振り返ってくれなくても。


やっぱり、メール位はしてお詫びしなくちゃ。


2人に代わりのうどんを届け、携帯を出す。