が、そこで待ち受けていたのは、鬼よりタチの悪い小鬼のワガママ。


事務所で用意したマンションの部屋が気に入らない、移動用の車はセダンにしろ、パソコンの回線は超高速でないと嫌だ。


数え上げたらキリが無い位のワガママを、向島さんと2人でなだめる。


引っ越しを終えた後、2人で食事がてらに居酒屋へ行った。


「いやー、大変だね」
「大阪でもかなり悲惨な目に遭いましたよ」
「志穂ちゃん、これからは僕と一緒に頑張ろうね! 」


あたしの肩を叩きながら浮かべるのは、爽やかな笑顔、しかも歯が真っ白。


名付けるとしたら『ホワイトニングビーム』だろう。


ヤバい、何か凄く素敵に見えて来たよ。


「さあ、帰って自分達も部屋を片付けなきゃ」
「そうですねー」


事務所は、とても素敵な場所にあたし達の社宅を用意してくれていた。


そう、小鬼2匹と同じ部屋の並び。


万里也と秀一郎は角部屋の2LDK、あたし達はそれぞれ1LDKを与えられたのだ。


要するに、


『プライベートもしっかり見張ってね、スキャンダルが怖いから』


という意味。